ジーザス・クライスト=スーパースター(多摩) パルテノン多摩 1999.10.30 ソワレ
| ジーザス・クライスト | 柳瀬 大輔 | イスカリオテのユダ | 芝 清道 |
| マグダラのマリア | 保坂 知寿 | ||
| カヤパ(大司教) | 佐川 守正 | アンナス(カヤパの養父) | 青木 朗 |
| 司祭１ | 松下 武史 | シモン(使徒) | 古島 肇 |
| 司祭２ | 川地 啓友 | ペテロ(使徒) | 林 和男 |
| 司祭３ | 岡本 隆生 | ピラト(ローマ総督) | 谷 淳三 |
| ヘロデ王 | 半場俊一郎 | ||
| 男性アンサンブル | |||
| 松宮 五郎 | 古谷 直通 | 松下 雅博 | 赤瀬 賢二 |
| 藤田 将範 | 黒木 仁 | 佐藤 龍二 | 遠藤 修 |
| 植村 俊輔 | |||
| 女性アンサンブル | |||
| 三橋 葉子 | 西島 美子 | 幸村 美佳 | 衣笠 純子 |
| 首浦真由美 | 中嶋 雅予 | 大越 真木 | 大島 愛子 |
| 佐藤 智恵 | 菅原 梢 | 種子島美樹 | 植松 恵理 |
まず、劇場。すっごい立派です。外見を見て「おぉ〜まさにパルテノンやんかぁ」と思いました。 駅からの道は、わずかながらの上り坂ですが、このわずかながらってのが続くとけっこうイヤ〜(^_^;) まぁ、イヤになる前に劇場が目に入りますけどね。 （単に自分が歩くのが嫌いなだけなんだけどさ） そして、劇場の中身。これも立派。ロビーも広々としていたし、トイレもキレイ。 だけど、でかいです。コンサートホールなのかなぁ？多目的ホールみたいだけども、コンサートホールのように見えました。 （なんせ、地元民じゃないから） さて、今回ゲットした席は、Ｓ席だけども壁際と言う端っこ。音響がどうなるか…と、ちょっと気になっていましたが… うーん、ちょっと音響は悪かったかな。どちらかと言えば前の方の席だったけど、ソロ歌はちょっと弱く聞こえました。 セリフも時々弱くて聞き取りにくいとかね。 あと、微妙に音楽とズレるとか…。 これは反響のせいでしょうね、きっと。ホールの作りの問題だと思うから気にしない事にしました。 この位の音響を気にしていたら、○○厚生年金会館の２階席（実質４階）で観劇できなくなっちゃうもんな(-_-;) もしかしたら、中央のブロックだったら、気にならなかったのかも知れませんね。 さて、感想です。 まずは全体的に・・・ 変な書き方かも知れないけれど、見るまで思っていたよりは良かったです。 うまく表現できないけれども、全体がよく見えた…登場人物が全員見えたんです。これは視覚的に「見えた」と 言うのではなく群集の一人一人が、何故この場面にいるのか。何故このポジションにいるのか、と言う・・・ うーん(-_-;)なんて書けばいいんだ？演出的に見えた、少しは理解できたような気がしました。 例えば、ユダ以外の使徒。以前観た時は、シモンやペテロすら「あ、使徒のひとり」と言う印象だったんです。 いや「あー、あそこにいるのは使徒だったんだな」と言う印象。決して、その当時の俳優さんが悪かったのではなく 今回は全体にちょうど良い舞台のバランスだったのではないかなと思いました。 この違いの理由は…わかっているんですけどね(^_^;)ま、後で書きます。 （ちなみに今回も前回も、観る前に『旧約・新約聖書』は読んでいました） ピラトが民衆達に向かって「彼（ジーザス）は王ではないのか」と問い、民衆達が「違う、彼は王ではない、王様は シーザーだ」と答えている場面。…途中まで民衆達の「王様はシーザーだ」と歌っているのが「王様はシバだ」と聞こ えていて、ヘンだなぁ、時代も地理も合わないし、第一シバって女王だよなぁ(-_-;)と、ちょっと悩んでいました。 まぁ、結局は「シーザー」と聴き取れたんですけどね(^_^;)こーゆーのが多目的ホールの弱点なんだろうなぁ。 四季の舞台でさえ、聞き間違いをしてしまうんだから、ほかの劇団だったら・・・（と、地元の厚生年金会館でセリフ が届かず１幕で帰ろうかと思った事があった） …ととと、話がズレてしまった。 で、もひとつ。この場面、何故か自分の頭の中で、『歌舞伎調』に再現されてしまう〜(^_^;) なんで？？？ジャポネスクが観たいから、勝手に妄想モードになるのかなぁ。 では、個別に… 柳瀬ジーザス ：第一印象が「なんだ、ジーザスって人間なんだ」…いえ、決して悪い印象じゃなくて。 極端に言うと、以前私が見た『ＪＣＳ』とは違う『ＪＣＳ』なんだと思いました。 その最大の理由が、”人間ジーザス”。 今回の『ＪＣＳ』は”ジーザス人間宣言”がテーマではないかなと。 ジーザスは人間だった。本当は人間だった。ただ自分の周りにいた人達に、自分が 思った事を語っているうちに、いつの間にか民衆が祭上げてしまった。 だから「ホサナ」の場面で、自分が止めても民衆は歌うだろう…と言うのは、民衆は 自分と一緒に神をたたえている…ジーザスは、そう思っているのに、実は民衆達は ジーザスをたたえている。そのギャップを感じてしまった。 だからこそ、民衆はあっさりとジーザスを見捨てた。 ここは私の祈りの場だ、と商人を追い散らす時のジーザスの心情って”自分の祈りの 場”と言っているけど、何故みんなは同じように祈りをささげる気持ちにならないんだ？ と言う怒りなんじゃないかなぁ。 ここからは、ちょっと辛口かな？ ゲッセマネでの歌は…人間なのに神の子として生きて（死んで）いかなければならない 苦悩や、ジレンマが感じられませんでした。 歌はうまい。声もいい。だけど、歌に表情がない。ここからは拍手できませんでした。 歌自体にひきこまれなかった…ちょっと残念。 もうひとつ残念だったのは、十字架の上でのセリフ。棒読みに聞こえたのと、瀕死の 状態なのに声量が一定…ちょっと興ざめ。だから、ここのジーザスのセリフが無表情で、 何故死の間際に、あんな事を言ったのかと言う、ジーザスの意図が見えません。 保坂マリア ：今回のマリアは、ジーザスより少し年上なのだと言う印象でしょうか。 姉のような母のような母性愛のツモリが、実はジーザスを愛していた…それで出てきた 言葉が「あの人がかわいい」だったのでは？ マリアは、ジーザスの教えを「理解」しているのではなく、自然に「わかって」いたの だと思います。 その辺りが、ユダや使徒との違いで、ユダは頭で「理解」しようとし、他の使徒達は ジーザスに心酔してたのでしないでしょうか。 だから、ジーザスはマリアといるとくつろげる存在だったのかも知れません。 あれ？こんなにメイクきつかったっけ？と思ったのと、意外とマリアって出番が少な かったように思えました。 以前は、ずっと出ていたんじゃなかったのかなー？と思ったのは、やはりこの『ＪＣＳ』 と以前の『ＪＣＳ』は別な作品なのでしょう。 生まれ変わった『ＪＣＳ』なのかもしんない… 芝ユダ ：うーん…『SONG&DANCE』の時の方が、ユダの狂気を感じました(~_~;) ジーザスの教えを頭で理解して、現実とずれたまま自分の理想を追い求めるジーザスを 暴走しないよう支えてきたのに、ジーザスの支えはマリアだった…と気がついた時には ユダは失望と嫉妬を感じたのだとは思う・・・思うんだけどさー(-_-)そのへんが、ど うも伝わってこなかったのが残念です。 私は、ユダには「狂気」を求めていただけに、ちょーっと…。 ユダって人間は、ジーザスを愛し、理解しようとし続けてきたけれど、とうとう理解 できずに、使徒だけの小さな集団に戻りたかったのに、ジーザスは自分の考えにもっと 民衆が共感してくれることを望んでいたのに。二人の道は分かれてしまい、それでも ユダは昔に戻りたくて、裏切りという行為をしたのでは？…その結果がどうなるか知らずに。 でも、今回のユダには、そういうのが見えてこなくて、何故裏切ったんだろう？と思い ました。なんだか、単にジーザスを独占したかったの？と。 谷ピラト ：ちよっとピラト総督には若い？感じにも見えたけれど、それが逆に総督としての苦悩が 感じられました。 手に血がついてしまったシーンは、この舞台での"血"は、ずいぶん薄いなぁと思いました。 以前見た時の光枝ピラトの時は、ドロ〜っとした"血"だったのに。見る位置のせいだった のかも知れませんね。 半場ヘロデ ：どんなヘロデなんだろう？と、かなり不安でしたが、全然っ！ 王になったばかりの頃は、ローマの支配をはねよけようとか、色々とやってはみたけど 結局は名ばかりの王でしかない事を改めて認識させられて、やる気を失ってしまった…。 そんな過去を感じさせてくれました。 実はジーザスになにか期待していたんじゃなかろうか？なんて思わせてくれるヘロデ。 一言で表現すると、妙に可愛いヘロデでした〜(^_^;) 下村ヘロデの退廃的な雰囲気もいいけれど、この半場ヘロデもいいぞぉ。 カーテンコールが何回あったのかメモるのを忘れましたが、ヘロデが衣装の裾を気にしながら舞台を降りていく のが妙に可愛い(^_^;)のと、ピラトが足元に残っていた"血のり"を気にしていたのが印象に残っていました。 以前の『ＪＣＳ』では、ジーザス（山口祐一郎）とユダ（沢木順）の二人が主役に見えたけれど、今度の 『ＪＣＳ』だと、ジーザスに関わった人全て（民衆も）が主役なのかもしれない…。そんな気がしました。 うーん、私としては、けっこう濃い舞台だった以前の『ＪＣＳ』が好みだけど、今回のあっさりした舞台も 悪くないかな。観に行って良かったなぁ！と、思いました。 劇場がなくなってしまった北海道にも、ぜひ来てほしい。ちゃんと来てほしいと思います。